Novel

TOP > ノベル > Short Short > BL > 勉強も大事だけれど

勉強も大事だけれど

 史郎はノートに鉛筆を走らせる振りをして、傍らにいる正樹の姿を盗み見た。細面に銀フレームの眼鏡をかけ、そこから小さめの一重が見えている。髪はさらさら、体つきは華奢だし肌は白い。首筋と肩幅でやっと男かなと思うのが自分の家庭教師の小此木正樹だった。
「この三角形を、こうやって……ほら、大きな正方形と小さな正方形ができるだろう」
 力仕事なんてしたことのなさそうな指先がノートの上と教科書を行き来する。史郎の手の方はサッカーだのバスケだのでした、突き指やら怪我やらで少しばかりごつごつしている。年下の自分の方が手がごつごつしてるのはどうなのだろう。ちょっと惨めだ。綺麗な顔に綺麗な手、細くてさわやか。きっとモテるにちがいない。ぼんやりとそんな考えに思いをはせる。
「おーい。聞いてるか?」
 唐突に正樹の顔が、横顔から正面に切り替わって少々史郎は驚いた。勝手な空想がどこからともなく漏れ出てしまったんじゃないかと慌てる。
「あ、あー聞いてる聞いてる!!」
「本当に? じゃあ、次のを自分でやってごらん」
「……すいません。聞いてませんでした」
 突きつけられたABCとふられた三角形の図案を見つめてため息をつく。数学はキライだ。ちょっとでも正樹の説明を聞き逃すとさっぱり分からなくなってしまう。向いてないって勉強なんて。
「もーいいよー! 三角形の面積なんて知ったっておもしろくねー!!」
 放り出した鉛筆が乾いた音を立てて机の上を転がった。横目で正樹の様子をうかがうと、こちらを見ながら苦笑していた。
「それじゃ、僕の授業がつまらないのかな」
「え? あっ、そうじゃなくって、聞いてれば分かるんだけど……」
「じゃあ、さっきは聞いてなかったんだね」
「あっ!」
 正樹が笑いながら目を細めて、微笑んだ。なんだか気恥ずかしさを感じてしまい、ちょっと身体を縮ませる。正樹がふっと壁掛けの時計がある方へ視線を投げ、そうだね。と呟いた。
「じゃあ、少し休憩しようか」
「やったあ!!!」
 思わず両手を上げて、声を上げる。今度は正樹がホントに笑っていた。あまりにも笑われるので恥ずかしさのあまり、立ち上がるとちょっとまってて、と声をかけてそのままリビングに降りていった。
 母親が用意したおやつを冷蔵庫から取り出しお盆に乗せて、紅茶の用意をする。いつもであれば、母親が用意をして持ってきてくれるのだが、今週は両親二人で知人の葬式へ出かけてしまって不在なのだ。
 お湯と葉をいれたポットにキルトのカバーをする。母親が凝り性なので、史郎も見ているうちにできるようになってしまった。とはいえ、きちんと煎れたものと、煎れていないものではまるで味が違う。正樹もいるのだから、飲ませるのならいつものように美味しい紅茶を入れてあげたほうがいいだろうと手間をかける。蒸らす間、お盆に砂糖を乗せ、コップも並べておくと、史郎は慎重にそれを運んでいった。
「お帰りなさい」
 部屋に戻ると正樹が自分のノートをめくっているところだった。勉強机とは別の小さなテーブルに盆を置くと、慌てて正樹の元へ駆け寄りノートをかっぱらう。
「なな。勝手にみるなって!」
「え? だって、見なきゃだろう。思っていたより良くまとまってるよ」
 ノートを抱えて守るようにする。けっきょくの所、教えてもらっている以上、ノートのすべても見ているし、書き方やまとめかただって教えてもらってるのだが、何となく気恥ずかしい。
「そりゃ、ちゃんと教えてもらってるもん」
「ちゃんと教えたことが反映されてるのは嬉しいものだよ」
 素直にそう言われてて史郎は思わず黙った。正樹は妙にはっきりと思っていたことを表現する。ちょっとばかりひねくれてる史郎には自然に嬉しいとか面と向かっていわれると、どうも恥ずかしくなってしまう。とりあえず、抱えていたノートをきちんと閉じて置くと、史郎は小さなテーブルいっぱいに乗せた茶菓子の方を指さした。
「たべよ?」
「いつも、ごちそうさま」
 何でこの人はさわやかなんだ。とぼんやり史郎は思った。

 茶菓子は近所で美味しいと評判の和菓子屋さんの抹茶ロールだった。クリームには小豆が混じっていて、生地は濃い緑色をしている。口に入れるだけで抹茶の苦い味と甘い小豆とクリームがして、不思議に美味しい。
「先生ってさ、モテるの?」
 なんとなく思ったことを口にして、次の瞬間、正樹が飲みかけていた紅茶を零しそうになっていた。ついでに咽せてる。あまりの驚きの激しさに、思わず史郎も驚いてしまう。
「……げほっ、い、いきなりなんで……」
「いや、モテそうだなぁっておもってさ」
 零しそうなのではなくて、少し零したらしい。下を見て焦っていたので片手間に手近にあったティッシュボックスを渡す。二、三枚引き抜いてズボンを拭いていた。近くのゴミ箱へそれを放る。
「……や、もてないから」
「えー?! まじで? じゃあさ、女の人とつきあったことある?」
 今度は手に持っていたフォークを取り落とし、ティーカップの皿にぶつけて大きな音を立てていた。慌てて、落としたフォークを元に戻し、体裁を整えようとしているが、手元が危ういのかままならない。その様子に驚きながら、正樹の顔を覗くと顔が赤くなっていた。相当、照れているらしい。大学生なんだから、もうちょっとこういう系統の話に慣れているのかと思っていたのだ。この反応は史郎には予想外だった。
「だ、だから! なんで、そういうことを……げほっ」
「や、そりゃ、そういうのに興味があるから……」
 というのはほとんど嘘だった。史郎は正直、恋愛に今のところ興味はない。なんというか、クラスの女子に魅力を感じないのだ。うるさいだけで口のきついああいうのと、休日にデートなどと会わなきゃいけない理由がわからない。面倒くさい。それだったら、ちょっと乱暴に扱っても笑って許してくれる男友達の方がよっぽど気が楽だと思ってる。あえて興味というなら、正樹がモテそうだから、という興味だ。どういう女の人が好みなのか。という個人的なものである。史郎の予想としては、落ち着いた年上が好きなんじゃないかな。おネェ様。とかいうやつ。と意味もなく想像してる。
「えーと……」
 答えてくれるのかと、フォークで抹茶ロールをつつきながら待ってみるもののいっこうに、正樹は二の句を告げない。切り分けたロールの欠片を二口食べたところで、せっかちな史郎は思わず正面に座っていたのをやめると詰め寄るように傍らに位置を変えた。
 あまり急に近寄ってきたので反射的になのか、正樹が少し逃げ腰になる。勢いで眼鏡がずれた。思わず足に手を置いて、それ以上逃げられないようにして、更に距離を縮めた。どうせなので、もっとぶっちゃけて聞いてみよう。と思った。
「んじゃ、キスとかした~?」
 一気に顔が赤くなり、面白いように表情が慌てた顔になった。涙目になった目が史郎の目からそらそうとあさっての方向を見る。面白すぎて笑いそうになった。しかし、声を上げて笑ってしまうのは失礼な気がして、何とか顔だけに留めておく。
「なに、先生じつは経験なし?」
 あまりにわかりやすい反応に思わず口にだしていた。いっそう赤くなりながらも、正樹はさっきまで史郎がいた方を眺めながら、ぶつくさ何かを呟いている。
「いや……ない、わけじゃ……」
「へえぇ。やっぱあるんじゃん」
 つぶやきは聞こえないものだと思っていたらしい、反応した史郎の言葉にいっそう、正樹が慌てた。なんだか、あまりにも照れるのでこっちも恥ずかしくなってくる。一応、年上で勉強を教えてもらっている先生なはずなのだが、この反応を見ているとなんだか、年下をからかっているような気分になる。
「こ、こういう話はやめよう! な?」
「えー。センセイなんだから、いろいろ教えてよ」
 意地悪だなーと我ながら思いながら、正樹の俯いた顔を覗き込む、端正な顔が困った顔に歪んでいる。眼鏡越しに見える一重の目は、涙ぐんで赤くなっていた。相当この手の話が苦手なんだろうか。いつも涼しげに澄ましたような態度を取る正樹がここまで慌てると思っていなかった史郎は、新鮮なその正樹の態度に妙な気分になった。食べ物を欲しがる子犬にわざと、待てと命令したくなるような。少しだけ、苛めたい。
 覗き込んだ顔を無言で寄せた。額に眼鏡のフレームが当たって音を立てる。それに気づいた正樹が軽く顔を上げた。まだ赤く火照るような顔が、年上に見えない。本当に子犬のようだった。
「しろう、く……」
 名前を呼ぼうとした正樹の口を口で塞いだ。思っていたよりも柔らかいなと、冷静な感想が史郎の頭をよぎる。驚いてるのだろう、何かを言おうとしている正樹のせいで、唇の動きが直に伝わった。触れた柔らかい唇が押しつけ合う形になって、史郎はぞくっと寒気のようなものを感じた。次の瞬間胸が高鳴り、身体が熱くなる。
「んっ……」
 思わず、息をのんでしまい声が出た。史郎は勢いでやってしまったものの、これ以上どうすればいいか、分からず固まってしまった。身じろぎすらできない。とにかく、何かしようと唇を動かした。正樹の下唇を舌でなぞる。甘い味がした。さっきまで食べていたロールケーキのクリームの味だ。やっぱここのケーキ美味しい、味わうように下唇に吸い付いた。
「はっ……ん……」
 正樹のうつむいていた顔が逃げるように上を向く、それを追いかけるように史郎は身体を寄せ、唇を押しつけた。唇を舐め、啜る。正樹は身体をおこわばらせて震えていた。苦しそうに眉を寄せた顔で硬く目をつぶっている。困ってるな、と思いながらも史郎は止められないでいた。
「しろう……くんっ」
 肩を押されて、史郎は自然と引き離された。離れるとき、ちゅと音がして、妙に興奮してくらくらする。離れきれずに正樹の膝の上に座ってしまう。
 顔を真っ赤にした正樹が目の前で、見つめてきた。膝の上に乗っていることは咎められない。ほとんど後に倒れそうになっている上半身を、少し起こして正樹が近づいてきた。
「な、にを突然」
「えっと……なんか……先生教えてくれないからさ」
 慌てながら、ずり落ちそうになっていた眼鏡を掛け直し、正樹は目をそらした。何か呟いているようだが、口元が動いているのが見えるだけで、何を言っているか分からない。
 嫌だったのだろうか、と少しだけ罪悪感を感じながら、まだなにか言っている正樹に近づいた。太ももに手を置き、身を乗り出す。
「なに?」
「あっ、いや! なんでもないから……」
 また、仰け反った正樹に史郎は少し意地悪心が湧いてしまう。珍しいその態度をもっと見たくなるのだ。正樹は本当に困っているようで、史郎を幾度か見た。目が合うとすぐに目をそらしてしまう。妙な加虐心を押さえながら、史郎は正樹の足の上を這うようにして、近づいた。足下が擦れてどきっとする。正樹が身体を強張らせた。後ろに手をついて力が抜けたら倒れてしまいそうだ。妙に胸が高鳴っているのを感じながら、それがどうしてなのか史郎は解らないまま正樹の顔に触った。眼鏡のフレームに指先が辺り、乾いた音がする。なんの抵抗もなかったので、それをそのまま、レンズに気をつけながら慎重にはずして、傍らのテーブルに置いた。
「……眼鏡ないと先生って感じじゃないね」
「……そうかな」
 正樹が普段のような表情でテーブルに置いた眼鏡に顔を向けた。眼鏡をしていると何となく一重が強調されていて、なんだか先生らしい、どこか厳しさを含んだ目だったのが、厳しさは薄れ目が柔らかく見える。
 ぼんやりとその横顔を史郎は眺めていた。目をつぶって考えてるような仕草の顔は、五つも歳が離れているとは思えない。
「先生さ、好きな人とかいないの?」
「え?」
 きょとんとした正樹に史郎は顔を近づけた。あまりに唐突に聞いたので、正樹の方は思考が追いつかないのか、数秒ぼんやりと史郎を見つめている。
「だれか、なんて聞かないからさ、居るか居ないか教えてよ」
「いや……それは」
 口ごもる正樹に鼻が触れるほど史郎は顔を近づけた。気持ちが落ち着かない。イタズラ混じりとはいえ、キスをしてしまったので気分が高ぶっていた。からかうつもりでしたことだけれど、もう一度してみたくなっている。また甘い味がするんだろうか確かめたかった。
「じゃあさ、さっきの……嫌だった?」
「えっ……あっ」
 史郎の言ったことに気づいたとたんに正樹は顔を赤くした。史郎は嫌そうではないなと勝手に思う。つっぱねたり、あからさまに拒否するようだったら、止めようと思っていた。けれど、そんな様子は今のところなさそうだ。
 さっきのように、もう一度唇をつけた。もうすこし、エッチな情報とか仕入れておけばよかったかな。と隅っこの方で考えながら、舌で正樹の唇を舐める。正樹の身体が、一瞬動いたがそれだけだった。逃げることも突っぱねる様なこともしない。唇を離す気になれなくて、軽く噛むように正樹の唇を食んだ。強く肩を掴まれて、あ、引き離されると感じ、唇を食むのを止めた、だが、それ以上の事が起こらなかった。
「先生?」
 様子をうかがうのに、顔を離して史郎が声をかけた。顔を真っ赤にして少し俯いている。肩を掴んでいる手だけに力がこもっていて痛いくらいだった。
「……て」
「え?」
 何かを言った最後の言葉だけが聞こえてきた。正樹が何を言ったのか聞き取れなくて首を傾げてしまう。肩を掴んでいる手が掴み直され、その力の強さに肩が上がる。
「……少し、口を開けて、舌を出して」
 絞り出すようなぼそぼそしたその言葉に、史郎は理由が分からないまま素直に従った。突然、顔が近づいてきて舌を吸われた。ぬるっとした感じと、自分と違う体温を感じてどきりとする。
「んんっ! んぅ……」
 強く吸われて、驚いてしまう。舌が口の中を探るようにしてくる。正樹の舌が触れるたびに身体に電気が走ったようにぞくぞくする。されるがままなのが嫌で、史郎はその予想だにしない正樹の行為を懸命に真似てみた。舌をなぞってくるそれを、逆に追いかけるようになぞり、吸い上げる。
「っ……はっ」
 正樹が顔を離そうとしたので、追いかけた。なんとなく、正樹のシャツを握っていた手を離し、正樹の首筋に絡めて、抱きつく。身体がいっそう近づいて、少しだけ開けた目に正樹がこらえるように目をぎゅっとつぶったのがみえた。

 実際の時間と体感の時間感覚が分からなくなっていた。それぐらい、史郎も正樹も興奮していた。唇を離しても互いに呼吸が荒く、どちらかが誘うわけでもなく、再び、唇を重ねていく。くちゅくちゅと音を立てながら、舌を絡め、抱きしめ合った手に力がこもる。
「ふぁ……」
 何度かした休憩のような合間、息の荒くなった史郎が呼吸をしているところを、正樹があご先を舐める。絡め合って溢れた唾液が垂れていたのだ。唇以外のところを舐められ史郎は感じてしまった。身体が震える。
「せんせ……」
 ぼっとして深く考えられないままで史郎は正樹を見つめた。多少、理性のある瞳で正樹が見つめ返してきたが、なぜかすぐに顔を逸らす。史郎はとっさに身体をすり寄せるようにかがめて、俯いた正樹の顔を覗き込む。正樹に絡めていた手を足の上に置いた。覗き込んだ正樹の顔はやっぱり赤い。興奮で潤んだ目に同じように荒い呼吸をしている。史郎は顔を撫で、シャツ越しに身体を撫でた。俯いていた顔がその行為で、あげられる。そのまま触れたまま手を下げて、ズボン越しになぞった。かたくなってる。
「あ……」
 すまなそうな顔でまた俯く正樹に史郎は彼の手を取ると、自分のそこを触らせた。同じようなことになってる。嫌がれるかと思ったがそれどころか、確認するように力を込められてなぞられ、息をつめた。
「っぅ……」
 なんとなく史郎は同じように正樹のズボン越しに触れていた指に力を入れてなぞった。正樹の腰が少しだけ浮いたのを感じる。とまらなくて、ズボンのボタンに手をかけて無理矢理外した。正樹のうろたえた声も聞かずに、下着越しにかたいそれに触れ、熱くなっているのを感じる。
「まって、ちょっと……」
 声を出すのももどかしく首を振る。触れている正樹の手を握り、強く自分に押しつけた。こすりつける形になって少し痛かったが、正樹の手がある。と自覚するとあり得ないぐらい興奮した。
「せんせ……も、触って」
 少しだけ、正樹はためらうような仕草をしたが、それも一瞬だった。たどたどしく史郎のズボンのボタンを外し、下着まで脱がしてしまった。
「先生!? ……っ」
 あらわになったそれを唐突に握られて身が竦んだ。擦り上げられて身体から力が抜けていくような感じがする。けれど、握られたそこだけは逆に熱い何かがこもったような感じがして、史郎は戸惑った。恐くなって触れていた正樹の身体から手を離してしまう。逃げるような体勢になったのを正樹が止めるように肩を掴んで引き寄せた。吐息が首筋に掛かって身を竦める。とっさに掴んだシャツを握りしめた。
「あっ……う」
 感覚を逃がそうとして、息を吐くと声が漏れた。首筋にもぞくっとした感覚を感じて舐められているのだと自覚する。戸惑いながらも、興奮する自分がいて、どう反応していいか分からない。そんなことを考えているうちに次次と扱かれているそこから先走りがぽたぽたと垂れた。
「せ、先生っ、ああっ……やだっぁ」
 身体の興奮に気持ちがついていかない。興奮とは別に恐怖を感じて史郎は思わず腰を浮かせた。だが、それも掴まれた手に押さえ込まれる。
「ごめ……んな」
 耳元で囁かれた。それとともに舌が耳たぶを舐める。耳元でくちゅと肌を吸う音が響いて体中の力が抜ける。正樹が動かしていた手が先端にたまった体液を塗りつけるように動いた。滑り気のある音がして、顔が熱くなる。抗おうと抵抗しようとしても、身体がいうことをきかなかった。むしろねだるように腰を動かしてしまう。
「んぅ……っは」
 首を振って必死に止めてもらおうとするものの、正樹は意に介さず、手淫は激しくなった。体液の擦れる音が、どうしたらいいか分からなくなってしまう。腰の付け根がきゅっと縮まるような感じがした。恐くてすがりつくが腰だけが引けてしまう。それを正樹が片手で押さえて、引き寄せた。ぎゅっと掴まれて目の前がちらつく。
「あっ……んくっああ、せ、せんせぇっ、い、っちゃう」
 激しくされて、涙が出た。恐いのになぜかそうしている正樹にすがりついてしまう。自分が分からない。息が荒くなる。どこかに行ってしまいそうな浮遊感に史郎は思わず正樹の首筋を噛んだ。
「っつ……」
 小さく正樹が声を上げる。けれど握ったままのその行為は止まらなかった。いっそう激しくされて、音を立てる。腰を引き寄せた手が背中を撫で、正樹の顔が間近に寄ると首筋にざらついた舌の感触がした。
「ひゃっ……」
 きつく吸われて痛みさえ伴う。自分の下半身が、正樹に扱かれてぐちゅぐちゅと音を立てた。濡れたそこが張りつめる。それだけで、もう達してしまいそうなのに、ちゅっと首筋を吸い上げられた。
「っ……あっ!」
 ぐっと包み込まれたそこが鈍く跳ね、史郎は溜まっていた熱を吐き出した。先に察したらしい正樹の手に包まれて、じっとりとそこが温かく濡れる。
「あっ、あ」
 身体が震えて残滓が零れた。どっと疲れて正樹の肩口に額をつけて息をつく。荒くなった呼吸が脱力した身体とともに落ち着いてくる。眠気すら襲ってきて、そのままうとうとしだしたとき、正樹が握っていたそこから手を離した。ぬるりとした感触に身体が跳ねてしまう。
 その感触で事実に気づいて思わず身体を離した。目の前にまだ熱っぽく顔を赤らめた正樹がぼんやりと史郎ので汚れた自分の手を見つめていた。
「わあっあ、ちょっとまって」
 手先から垂れそうになったそれをみて、史郎は大慌てで、ティッシュボックスからありったけティッシュを抜くと押しつけるように正樹の手を拭いた。粘りけのある精は拭きにくくて、上手く拭き取れない。焦って正樹の手を握った史郎の手に拭き損ねたそれがべっとりとついてしまった。
「うわ……」
 新しくティッシュを取ろうとして史郎が視線を外すと、正樹が汚れた手を握ってきた。動かされて、ついてしまった体液が手のひらから零れる。それを正樹が口を寄せて舐め取った。
「な、なっ! ちょっと先生!」
 狼狽した史郎の声など聞こえないように正樹がゆっくりと赤い舌で手のひらをくすぐるように舐めた。あんまりにもゆっくり味わうように舐められて、史郎は突っぱねるより見とれた。ぬるっとした舌で手のひらを刺激されて、達したばかりなのに甘く痺れる。
「……ふぁ」
「ん……」
 正樹が唇を付けたまま小さく呻くとその震えが手を通して史郎の身体を走る。恥ずかしくて、視線を落とすと半脱ぎだった正樹の下半身が見えた。かたく膨らんで下着を持ち上げている。時折、ぴくりと小さく動いていた。
「先生……」
 そこに視線を固定したまま、史郎は呟いた。握られ、舐められている手に力を入れると、引き離す。ちらっと、残念そうに離れた手を見る正樹が見えて、妙な興奮を覚えた。正樹が舐めていた自分の手を真似をするように舐めてみる。金具のような匂いと苦い味がする。
「マズっ……」
 正直に感想が口からついて出た、その史郎のつぶやきになぜか正樹が恥ずかしそうな顔をして俯く。興奮が落ち着いて、史郎はまじまじと正樹を見つめた。あれだけ自分を荒々しくした相手に見えない。されるがままになって引っ込んでいた加虐心が再び胸にわく。
「先生のも……こういう味かな」
「え?! あっ!」
 腰を退いて、屈むと持ち上がっていた下着をずらした。飛び出すように出てきたものをジッと観察する。正樹が戸惑って身を引くと、下着とズボンがずれて逆にほとんど脱げてしまった。張りつめたそれを指先でなぞると正樹の身体が震えた。根本を遠慮気味に押さえた。
「っ……」
 正樹が息をのむ。少しためらいながらゆっくりと指先を上下に動かし、ゆっくりと考えながら扱く。正樹が震え、足の上に乗っていた史郎の身体がちょっとだけ浮いた。
「……う……ぁ」
 堪える様な声が、いちいち史郎を煽った。徐々に手に力が籠もると、鈴口から先走りがたまった。こぼれ落ちそうになったそれを思わず口で受け止める。不思議な味に顔をしかめるが、嫌ではなかった。ためらいがちに、握っていたそのものに舌を這わせる。正樹の身体が驚いて跳ねた。
「あっ」
「んう」
 手で揺れるのを押さえながら、舌を押しつけるようにして舐った。下から鈴口までゆっくりと舐め上げ、上まで舐めきると口に含む。鈴口に残っていた先走りが口にじわりと染みた。何とも言えない味に眉が顰む。
「……う」
 なるべく、歯を立てないように首を動かし、添えた手で扱いた。苦しくて呼吸がしにくい。含んだまま溜まる唾液を嚥下しようとすると、正樹が焦ったように身体を動かした。史郎の頭に手を添える、おそらく離そうとそうしたのだろうが、力が入らなかったのか髪を撫でるだけだった。掻き上げられた髪が首筋を撫でてくすぐったくって息をのむ。史郎の口が飲みきれなかった唾液を残したまま、離れてしまう。じゅるっと厭らしい音がして、正樹が震えた。
「……っはぁ」
 赤い顔がいっそう赤くなっている。史郎の視点からだと見上げる形になるので、妙に子供っぽく見えた。起立しているものも目に入るので妙な厭らしさを感じる。
「せんせぇ……なんか、可愛いよ」
 何も言わずに、正樹が顔だけを激しく左右に振る。恥ずかしいのか、感じているのか、唇を噛んで息をつめていた。史郎はなんだか我慢されているのがかんに障った。自分は激しく声を上げたのに、我慢されたのが悔しかったのだ。
 触れる程度だった指先に力を込めて扱いた。唾液で濡れたそこは扱かれて音を上げる。吸い上げるように息をついて飲み込むように口に含んだ。
「ん……んんっ」
 じゅっと啜る音を上げながら、指先で扱く。喉奥まで飲み込むようにして吸い上げながら含むので、苦しさに涙が込み上げるが、史郎は根を上げない。むしろ激しく、舌を幹に這わせて押しつける。
「っはぁっ……ああっ……」
 正樹の身体がくの字に曲がって口から離れそうになる。追いすがるように史郎は這って口で啜り上げて深く加える。正樹の手が頭を撫でるように掠めていった。足ががくがく震えてる。くわえがたいほど膨らんだそれを啜り上げ、嬲った。咽せそうになるのを堪えて、先端を舌先でなめ回す。
「ふ……あ……うう、史郎っ……あっあぁ」
 呼び捨てにされた。あまりにも名前を呼ぶ声が必死すぎて、興奮させるはずの史郎がどきっとした。泣きそうな潤んだ声はどこか色っぽく感じる。衝動のようなぞくぞくした感覚に、されたのとは違う快楽を感じる。先端に擦り付けるように舌を押しつけ、上下する手の動きを早めた。ぐちゅぐちゅと厭らしい音がする。と、唐突に頭に触れていた手に力がこもって押しつけられた。くわえていたものが喉奥を突くように奥に容赦なく入ってきて史郎は苦しさに呻いた。口の中でそれがひくっと揺れる。
「うぁ……」
「んん!!」
 ひどく苦いものが口の中に放たれて、反射的に史郎は首を仰け反らそうとした。だが、頭を押さえる手は力がこもっていて、離すことができない。なすがまま、口の中にすべて吐き出される。びくびくと震えるそれに幾度かえづいてしまうが。抵抗できなかった。
「っは……あ」
 脱力するように、手が頭からするりと外れて、とっさに史郎は正樹から身体を離した。喉奥に絡むんでくるしくて、精を口に含んでいるのに咽せてしまう。
「げっほ……げほ」
 とっさに口を押さえたが、咳き込むのを止めることはできず、史郎は口に含んでいた正樹のを全部手にぶちまけてしまった。手から溢れて、正樹のズボンのうえに滴ってしまう。
「んぐ……ご、ごめ……」
 慌てた正樹がティッシュを差し出し、口に添えた手の下でこぼれ落ちるのを止めた。空いた手でそのティッシュを受け取ると、零れそうになっている残りをすべて拭い、新たに差し出されたティッシュでズボンに落ちたものも拭き取った。
「だ、大丈夫か……?」
 控えめに、でも心底から心配する声音で正樹が声をかけてくる。口の中にはまだ残っているので、正樹はしゃべらずに幾度か頷いた。零れないが、吐き出すことができずに、唾液とともに口に残った物を飲み下す。ねっとりとした粘液は喉に絡んでひどく苦かった。
「にが……い」
 顔をしかめながら、正樹の紅茶を勝手に取ると、史郎はそれを一気に煽る。ぬるくなっていたのでたやすく飲めた。とはいえティーカップ程度の量では、粘り気が取れない。口に残る変な感覚を、唾液を飲み込みながら誤魔化した。自分の状況を落ち着かせて、改めて史郎は正樹を見ると、俯いて真っ赤になっている正樹が前にいた。
「先生?」
「あ……いや、えっと大丈夫?」
 少しだけ、言葉を詰まらせながら、正樹が声をかけてきた。小さく頷きながら大丈夫と声をかけると、赤らんだ顔がほっとしたように微笑む。史郎はその笑顔を見て、今更ながら自分がしたことに気づいて恥ずかしくなった。
「……せんせ、えっと、俺……」
「あ……えっと、なんか、いろいろ話す前に……これ何とかしよう」
 そういわれて周りを見ると、自分も正樹も局部だけ晒してぼんやり座り込んでいた。周りには丸めたティッシュが転がっているし、正樹のズボンには白っぽい染みが付いていて汚れていた。何とも言えない惨事に、史郎は慌てて正樹の上から退くと、下着だけでもと慌ててはいた。気恥ずかしげに、正樹も同じようにズボンの前を止めて、散らばったゴミをゴミ箱にいれていた。
「えっと、先にお風呂使ってください……ズボンは、父さんのスウェットがあるから、貸します……」
「……お借ります」
 なんだか、互いに小声でそういうと、どこか気まずい空気を漂わせながら、部屋を出て行った。

 二人で並んでベッドに腰掛けながら、紅茶ではなくミルクを飲んでいた。史郎も正樹も濡れ髪で、史郎はパジャマ姿、史郎に至ってはシャツに白いスウェットのズボン、しかも丈が合っていない。ドアの向こうでは洗濯機が廻る駆動音がかすかにしていた。
「先生、あのさ」
 ずっと黙ってマグカップを覗いていた史郎は小さく呟いた。勢いとはいえ自分が一番先に手を出したのだから、謝ろうと思った。だが、真剣に前を向いている正樹を見て、それ以上言えなかった。外していた眼鏡はまたしている。あられもない状況だった時と全然顔立ちが違っていて、史郎は少し怯んでしまった。
「……えと、好きな人だっけ」
 ごめんなさいと無理に口に出そうとしていた史郎よりも先に、なぜか正樹はずれた話を振ってきた。前にちらっと聞いた質問を今更確認されて、きょとんとしてしまう。
「あ、もう……それは」
「いいの?」
 なんとなく、答えてもらいたくなかった。訊いたときはそう意味がなかったが、勢いとはいえ互いに普通、男同士ではしないような事をしたのもあってか聞きづらい。答えた言葉が聞き覚えのない人だったらどうしよう。と思ってしまった。そんな風に思ってしまう自分が居ることに史郎は内心でドキドキする。不安な気持ちがなんだか分からない。変な風に触れてしまったせいなんだろうか。
「……一応ね。いるんだけど……人には言わないつもりだったんだ。いろいろ問題あるし」
 調子よく訊いた態度を今も継続しているのかと思っているのか、正樹は落ち着いた声で、話を続けた。史郎の方は逆に身を固くして、胸が苦しくなる。今更、訊くのが恐くなったとすら言えず、ぎゅっと目をつぶる。
「あーと。その子は、年下で、元気がいいかな」
 予想と違ってそれはそれで驚いた。年上かとも思っていたし、落ち着いた性格が好きなのではとも思っていたのだ。史郎の反応を知らぬままに、しばらく沈黙が走り、それからゆっくりと呼吸する音が聞こえた。
「……ちょっと、調子に乗ると歯止めがきかなくなるなぁ」
「あ、の、」
 それ以上、言って欲しくないので、止めてもらおうと史郎は正樹の方を向いた。といつの間にか前を向いていたはずの正樹がこちらを向いていて史郎はものすごく驚いた。照れくさそうに笑っているのにどきっとする。
「先生?」
「うん? 相手は僕の生徒だよ」
 驚きすぎて目が瞬いた。笑った正樹が変わらずこちらを見ていて、気恥ずかしい。ゆっくり目をそらして、一口ミルクを飲んだ。甘い味が口に広がるが、いつもなら落ち着くはずの効果はなかった。むしろ、胸が落ちつきなくどきどきと鳴っている。
「先生、家庭教師って、俺が初めてだよね」
「……うん」
「……俺の他に生徒いるの?」
「いないよ」
 思わず史郎は押し黙った。正樹の方も何も言わない。ちらっと様子をうかがうと、静かな顔で持っているマグに口を付けて飲んでいた。ほっとするような表情だが、少しだけ赤くなってる。それを見て、史郎の方も恥ずかしくて赤くなった。
「だってだって、俺、男だし、年下だし、中三だし、子供だし」
「まあ、そうだね。だから、言わないようにしてたんだよ」
「でもでも、何で!? どうして!? だって、先生は頭いいし、さわやかだし! 女の人にモテそうなのに!!」
「……モテそうなのとかは、あんまり、好きになるのとかは関係ないような」
 なぜか、恥ずかしかった。顔が一気に熱くなる。思っていることを次々に口に出してしまう。止められない。
「だって! 俺なんか、なんで、面白くないし」
「うーん。面白いよ、予想できない事をしてくるし……今日のはちょっと驚いて……まあ、自分も調子にのったというか、我を忘れたというか。ごめんな」
 持っていたマグからミルクが零れそうになるぐらい大きく首を振って正樹の言葉を打ち消すようにした。顔が熱く、上手くしゃべれなくなってる。今更ながら、自分はなんてことをしたんだと反芻して、死にたくなる。
「おお、俺が悪いからそれは、だって、すっごく気になったんだよ。だって、先生、なんか落ち着いてるしさ、優しいし、そういうのってモテそうだし。なんか、俺」
 勝てそうにない様な気がしたのだ。優しくて、頭が良くて、落ち着いていて。絶対モテそう。正樹の立ち振る舞いに、きっと女の人はドキドキするだろう。好きになるだろう。女の人に自分は勝てない。子供で男だ。うるさいのと、元気なのしか取り柄がない。典型的な子供な自分に、正樹は生徒とは思ってくれても、それ以上の想いは抱いてくれないだろうと。
「いや……自分の生徒に興味を持つような男だよ」
「ええと。なんだけど。けど、なんか、俺……嬉しいんだけど」
 絞り出す様な言葉に、正樹の眉が少し上がった。驚いたような顔になって、それは柔和に緩んで微笑む。こちらが照れてしまうほどの優しくて柔らかい笑みだった。
 ふっと手が伸びて、頭を撫でられる。すこしだけ重みを感じながらも優しく滑る手の感覚にミルクを飲んだときのような安心するような感覚を覚えた。
「嫌じゃない?」
「嫌って?」
 優しく撫でられ、心地よさに酔うような感覚だった史郎に、正樹がぽつりと訊いてきた。何が嫌なのか分からなくて聞き返す。すると、ちょっとだけ頬を赤くして、目をそらして、少し考えるように黙った。
「あの……さっき、しただろう? その、触ったりとか」
 そういわれて一気に思い当たり、真っ赤になった。あまりにも鮮明に思い出してしまい、恥ずかしさに涙目になってしまう。落ち着こうとして慌ててマグに口を付けてしまい、揺れていたミルクが口に不必要に入ってきて咽せてしまった。正樹が慌てて、史郎からマグを取るとテーブルに置いた。次いでなのか自分のマグもそこへおいて、改めて二人は対峙する。
「えと、俺もいろいろした」
「っつ……そ、れはまあ、僕はまあいろいろ想うところがあるので、嫌とは想わないし……むしろ、ちょっと嬉しいかなぁ」
 まさに思い出してるのか、子供のように笑ってる正樹に、史郎は少し驚いた。それと同時に自分のしたことが思い出されて、顔が赤くなって消えたくなるほど恥じ入る。
「……やじゃない」
「え?」
「えと、嫌じゃなかった……です。気持ちよかったもん」
 そういうと、手がふっと顔を掠めて触れた。優しく顔を上げられる。いつの間にか顔が近くに寄っていた。眼鏡越しにこちらを見ている。何とも言えない顔だった。それをみて、察するように史郎は目をつぶる。温かく柔らかい唇を感じて、落ち着いたはずの気持ちが再びドキドキしてきた。
「ん……」
 吸いつくように、顔を寄せてきた正樹にすがりついて抱き合った。また、身体が熱く火照ってくる。
「先生ぇ」
 零れるように呟くと、ぎゅっと胸に抱かれた。胸が温まるような、煽られるような、どっちともつかない気持ちが交じった。勢いでしていたキスよりも、なんだか気持ちが良かった。
「史郎……くん」
 すがるように名前を呼ぶ正樹に、史郎は弱く首を振って囁いた。
「呼び捨てがい……んぅ」
 言い切る前に唇をふさがれた。温かい舌が、中を舐める。ぞくぞくと気持ちが高ぶって、くらくらした。また、身体に触れてもらえるのかと期待半分でされるままになっていると、突然けたたましい音が1階からしてきた。
「うわぁあ」
 互いによっぽど緊張していたらしい、その音に大きく仰け反り思わず、距離を置いた。二人してぽかんと見つめ合ったまま、何の音だと模索する。
「あ、洗濯終わったんだ」
「ああなんだ……」
 なんだかほっとした後、おかしくなってしばらく笑った。笑い終えた後、今度は唇に触れあうだけのキスをする。ただ、なにもするでもなく、くっつき合って、顔を寄せ合う。
「先生」
「ん、なんだい?」
「今日、一緒にいてくれる?」
 懇願するように呟いた史郎に、正樹はちょっと考えるような態度を取った。それでも、史郎はなんだか離れがたかった。挑発するように続けてしまう。
「先生でしょう? いろいろ教えて?」
 ねだるようにいった史郎に、正樹が一瞬、狼狽えながら、一呼吸置いて、微笑んだ。ぎゅっと抱くと耳元で小さく囁く。
「君がちゃんと言うことをきいてくれるならね」
 妙に熱っぽい声で言われて、史郎が今度は狼狽した。顔が真っ赤になった史郎をみて、正樹が声を上げて笑う。つられてそのままま、二人は笑った。